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COLUM BY HIROKAZU YOSHIDA.
建築家吉田裕一がお送りする不定期コラムです。


2004.9.30 (thu)
まちがいだらけの気密化、そして呼吸する住宅
先日、NHKのTVで建築家・藤森照信の「スロー建築-------」と言う番組を観た。以前、赤瀬川原平の「我輩は施主である」と言う本を読んだことがあって、藤森の設計した「ニラハウス」のことはその成り立ちから良く知ってはいたが、今回、あらためて藤森の自邸「タンポポハウス」とともに、とても興味深く見入ってしまった。彼の処女作「神長官守史料館」は吉阪隆正を通してガウディの影響が見て取れるし(と言うか、今井兼次っぽいけど)、とことん自然素材にこだわる姿勢には頭が下がる思いがした。あまり知られていないけど、「タンポポハウス」の前に彼が住んでた(建てた)家はセキスイハイムのユニット住宅だったってこと知ってました?きっとあのころの彼はただの建築史家であって、建築家ではなかったんだろう。気密化のかたまりのような近代的なユニット住宅からタイムスリップして、一見してスカスカに見える昔風の板張りの家にたどりつくとは、きっと本人も思ってもみなかったんじゃないのかな。

24時間換気が義務化されるようになって、ますます気密住宅に対する関心が増えてきたような気がするけれど、もともと発端はカナダの「R2000」とかが騒がれていたころからだろうと思う。あのころの住宅メーカーはこぞって似たような工法の開発に躍起になっていたような気がする。

建物を気密化することによって、漏気が無くなり熱効率は飛躍的に上昇した。しかしその反面、構造躯体は呼吸できなくなり、石油生成物を元に作られた建材や家具からの放出される化学物質に悩まされるようになってしまった。そして、いきおい機械換気に頼らざるを得なくなってしまったのだ。さらに建物内部と外部の気圧差によって起こる空気の流れが壁内に湿気を運ぶことによる結露を防ぐために内部にポリエチレンシートを張りめぐらしたことによる、いわゆる「防湿」と言う概念が生まれたことも、気密化への拍車をかけることにつながった。「魔法瓶のような住宅」と言うキャッチフレーズが美辞麗句になってしまったのは、機能を追及するあまり自然の法則や、その恵みを忘れた結果と言っても過言でない。

1995年、フィンランドでは「呼吸する木造住宅」と言う研究論文が発表されている。そのなかで、アスコ・フースコと言う人物は「魔法瓶手法」が室内空気の質をより悪化させ、機械換気に頼るようになってしまった「湿害」について警鐘を鳴らしている。省エネ時代に登場したミネラルウール(グラスウール、ロックウール)断熱材と防湿工法が「病める家」をつくってしまった、と断言し、その病気を癒すには自然の摂理を取り入れ、防湿シート無しの木質繊維断熱材を使うべきである、とも言っている。

それに引き換え日本の住宅はいまだに、やれQ値だK値だとかと、物事の本質に気が付いていないのが現状だ。-----------まあ、外断熱の考え方は一歩前進とも考えられるけれども。

これは私の考えだが、せっかく壁の厚みがあるなら充填断熱を選択するのが自然だし、なにより、何かで建物をすっぽり包むと言う発想はどうも気に入らない。そこで木質繊維断熱材の登場である、いわゆるセルロースファイバーと言われている新聞紙とかダンボール等の古紙(再生紙)で形成されているもので、呼吸する断熱材の代表と言えるだろう。私自身、以前は「アイシネン」というイソシアヌレートでできている100倍発泡の充填断熱材がベストと思っていた時期があって、大手住宅メーカーの断熱パネルに対抗する最も優れた商品のひとつと考えていた。又、吹き込み(吹き付けではない)セルロースファイバーも環境負荷の最も少ない断熱材として高く評価はしていたが、いかんせん壁内での沈降と言う施工上致命的な欠陥が気にいらないでいた。しかし、接着剤にでんぷんを使用した「吹き付けセルロース」はその悩みを一気に解決してくれた、そう沈降がないのである。

又、ホウ酸が含有されている事によって、防蟻性と、自己消火性まで備えている。だから、最近はもっぱらこれを薦めている。建方の後、屋根裏と壁に隙間無く充填されたセルロースは、目視で確認出来るので間違いが無いし、まるで昔の土壁を思い起こさせる、さらに内装の仕上げに自然素材の材料を使う事によって、建物一体で呼吸する住宅が出来上がる。じつに美味しい話である。勿論ベーパーバリア(防湿シート)は使わない。さらに、1階の居室の天井裏には防音も兼ねて、50oのASA WOOL(麻ウール)を入れている。施工中もチカチカしないし、なにより100パーセント自然素材である。ひとつ難点を言えば、どちらも前述のミネラルウール(マット系)に比べて若干割高だと言う点である。しかし、たいそうな玄関ドアや、豪華なシャンデリア等にお金をかけるよりはよっぽど価値がある選択と言えるのではないだろうか。

シックハウス対策法では、気密処理を行なうことで外部および壁内の材質の種類は対象外扱いにしてしまった。合理的に見えるが、んーん!それでいいのかな?と考えさせられてしまう。

なお、吹き付けセルロースは建築仕置き人とも言える桜乃アーキダムさんのところで施工出来ます。

参考文献 平成9年8月10日  新建ハウジング

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