(有)吉田建築研究所 吉田裕一 2014年は忙しくもあり、暇でもあった年になった。 4月からの消費税8%適用に伴う駆け込み需要で建築界は一時大忙しになった。加えて震災復興の災害公営住宅の整備、仙台市地下鉄工事などが重なったせいもある。 しかし夏以降はその勢いはぱったりなくなった、さらに頼みにしていた来年4月からの消費税率10%が見直しになったこともカウンターブローになったと考えられる。 つまり今年全般は忙しく、後半以降は暇になったと言うことになる。 ただし、土建業は相変わらずの堅調で、復興工事に伴う地盤改良工事や防潮堤工事など息つく暇がないほどである。また指定工事店制度を取っている給排水業者なども相変わらずのバブルまっただ中らしい。 着々と整備が進む集団移転などに対応しての住宅需要はそれなりに見込めると考えられるが、全国的に住宅は飽和状態で供給過剰の状況は変わらない。 震災復興が一段落すれば今後東北地方でも伸び悩みの傾向に行くのではないかと思われる。 住宅資金の生前贈与税の緩和や、エコポイント制度の復活(予定)など、政府はそれなりの手を打ってきているが、かたや多くの分野で見直された京都議定書の中で、2020年省エネルギー住宅への完全移行と言う目標は何故か残ってしまった。 低炭素社会の創設と言う目標に向かっての省エネルギー制度は間違っていないとは思うが、長い間住宅の設計に携わってきたものとすれば、どうしても違和感がある。
今年はこの改正省エネルギー制度の講習会に何度も通った。 その結果分かったことは、省エネ計算の方法はちっとも省エネではなく、この制度を構築するのにかかった予算とエネルギーは並大抵のものではないだろうということ。 今後その制度が義務化されたら、今までのような、総ガラス張りの建物は建たなくなるだろう(もちろん用途によるが)、これは性能評価や長期優良住宅制度が出来たときからそうなのだが、基本的に建物を単に性能と言う分野で評価するのはおかしいと言わざるを得ない。エコと言う名にかこつけた相変わらずの金持ち優遇の税制制度も、誰かが結託して作った陰謀に等しい疑いたくなってしまう。 住みやすさ、使いやすさ、空間の多様性は決して数値で測れるものではないし、そのことは多くの建築デザイナーの足かせになってしまうと考えられる。 計算方法の中にもあったが、仕様規定と実質計算の誤差はそんなに大きいものではない。それならもう少し簡便なやり方を考えてほしいと思う。 なんだかんだ言って、制度設計においては相変わらず大手住宅メーカー主導になって進んでいると考えざるを得ないのは困ったものだ。
とは言え、住宅を性能で評価する時代はもうすぐそこまで来ている、確かに寒い家、暑い家、結露する家、雨漏りする家は論外だと思うが、暮らしやすい家、家族のだんらんが出来る家、見晴らしがいい家、などは性能では割り切れない。
我々建築家はこれから何をすればいいのだろう? 自問自答の日々はこれからも続きそうである。
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