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COLUM BY HIROKAZU YOSHIDA.
建築家吉田裕一がお送りする不定期コラムです。


2018.11.05(mon)
これからの住宅に望むもの

(有)吉田建築研究所 吉田裕一

長年住宅の設計に携わって来ているが、昨今の住宅を取り巻く状況の悪さはかつてバブルがはじけた時、または東日本大震災の直前の不況時に匹敵、もしくはそれ以上と思われる。
とは言え、周りを見渡すと、住宅建設がないわけではない。
私が住んでいるのは(いわゆる)閑静な住宅地であるが、ここ数年周りに続々と建設されているのは、大半が元の敷地を2分割にした建売住宅だ。
そして、その建設会社(販売業者)は)ローコストハウスメーカーといわれる大手住宅メーカーもしくは地元の住宅業者である。
この辺は団地として造成から50年近く経ち、住人の多くは高齢化し、さらにそれに追い打ちをかけるように降りかかった震災で解体を余儀なくされ、その後代替わりすることなく空き地になったところが多い。
よほどの裕福な家庭ならともかく、普通の30台夫婦が買える不動産の借金の総額は¥3.000万ぐらいが限度ではないのだろうか?
そういう意味では販売される建売住宅の価格は妥当な金額と思われるが、狭い敷地に車2台、延床30坪強、基本ローコストとなると、おのずと仕様が決まってくる。
推し量ったように外壁は安価なサイディングで、デザインに工夫や特徴はない。
場合によっては並んだ2棟が色は違えど全く同じプランということもある。
それでも、断熱や設備の仕様はそこそこで、構造に関しては耐震等級2か3はクリアしている。狭いながらも必要な部屋数を確保していれば、あとは住むほうがそれに合わせれば良いわけだから、高給取りでもない限り特に問題はないのだろう。
しかし、街並みと言う観点で見ると、これらの住宅及び住宅地が20年、30年後にはどうなっているのかを考えると一抹の寂しさを感じざるを得ない。

翻ってみれば、日本国内は当の昔に住宅供給過剰になっている。
都会に人口が集中することにより、過疎化が進み、空き家、空き地が増える。都会にはマンションをはじめ集合住宅が建設され、分譲または賃貸として供給される。

過去現在を通して、住宅産業は産業という名の通り国策のもと発展してきた。
その多くは外圧であり、あるいは天下りの公務員を受け入れる外郭団体の設立のためでもあった。
行政は地震、台風、大雨、地球温暖化など災害や環境の変化に合わせて、税金を優遇したり、補助金を出したり、住宅産業をあの手この手で先導してきた。
ここ最近の断熱化住宅(ZEH)もそのいい例だ。
とはいえ広い日本、一律に網をかけるのは難しく、コストアップにつながるZEHは果たして効果があるのか?やがて法令化されるこの仕組みについては未だに懐疑的な見方も多い。
そんな中、今、住宅業界の最後?の望みは消費税アップだ。
当然ながら、駆け込み需要そしてエコポイントなどの追い風を期待している。
ただ、過去の消費税アップ後の急激な冷え込みを体験しているだけに一律に喜んではいられないのも事実。
全国的に見ても、建築の需要は2020の東京オリンピックを頂点として、その後は特に打つ手がなくなり、落ち込むと考えられている。

一方、建築の工業化率は進んではいない。もちろん3DプリンターなどといったようなウルトラCもあるのだろうが、50〜60年経過したRCの耐久性や大型木造の需要喚起など、過去の見直しや新しい工法の模索などを図ったりはしているが、職人不足、技術者不足といった慢性的な問題の解決は出来ていない。

そんな中、これから求められる住宅とは何だろうか?
・・・この答は難しい。
何かに特化して計画することはできるとは思うし、今までもそうだった。
良質なものを作ろうとすれば金が嵩む、また、自然素材や本物を使えばメンテナンス費用がかさむ。収まりを単純化しスマートに仕上げようとすれば出来ないことは無いが、こちらも住むことを考えると、その使いこなしには難がある。
個人的には住宅に、何々風とか何々様式とかは当てはまらないと思っているが、なぜか流行りのように誰かが先導していたりする。

住宅産業界にもユニクロ化は進んでいる。
かつて、勝れたデザインあるいは優れた仕様は、その開発にたくさんお金をかけられる、または優れたデザイナーを有する大企業でなければ出来なかった。しかし、情報社会(ネット社会?)となった現在、優れた情報は世界のどこからでも簡単に手に入るし、優れたデザインも大手しか出来ないという時代は過去となりつつある。
つまり、安価である程度良質な住宅はかつてないほどの勢いで広がりつつあるといってもよいだろう。
逆に大量の住宅を日本全国に造ってきた大手企業は、数多くのアフターを抱えることになり、むやみに冒険ができなくなってしまった。
こちらは経費のコストバランスが取れなくなり、これからも苦戦は続くと思われる。

ちなみに、我々設計事務所が作る住宅は、決して住宅産業の片棒を担いでいるわけではない。
しかし、景気の浮き沈みに左右はされる。もともと市場の1パーセントにも満たないからだ。

どうも結論が出ないコラムなってしまったが、今言えることは、しがらみのない自由な発想で住まいを創出できる建築家の住宅にもっと多くの注目が集まるように日々努力をしないといけないことだと思う。


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