(有)吉田建築研究所 吉田裕一 当社は創業以来(〜21年)住宅の設計監理を主たる業種とするアトリエ系の設計事務所です。 昨今、首都圏を中心とした建築家の設計による住宅(いわゆるデザイナーズ住宅)が急速な流行を見せていますが、当社もここ3〜4年ぐらい前から、エンドユーザーを対象とした設計監理の仕事を数多く手がけるようになりました(マイスタープロジェクトです)。 設計事務所に任せるとどうしても高くつくと考えられがちですが、しかしよく考えてください、たかが住宅と言え 設計施工分離! の方が望ましいのは言うまでもありません(・・・・されど住宅です)。 一般の工務店やハウジングメーカーのように設計施工を一環で行なうことは一見安価のように思われがちですが、営業、設計、工事と担当ごとにセクションが分かれていることや、個人には能力の限界があるため実施設計や、プラン作成までも外注している事は良くあることです。さらに最近は何の資格も無いのに建築業を営むヤカラもいて、全て外注というところもあるくらいです(いわゆる、イメージ売りというもの・・・これ一番たちが悪い)。すなわちエンドユーザーの目に見えない形で経費はかさんでいると言う構図になっています。 設計費はもらっていないとか、格安であるとかの宣伝文句は、寧ろブラックホールをたくさん持っている事の裏返しに過ぎません。 又、全てを自社でまかなうと言った会社の場合(ハウジングメーカーなど)は逆に設計力のスキル自体が問題になります。 一般的に餅屋は餅屋と言う考えの方がいいものが出来る確立が高いのは言うまでもないと思います。 設計監理料を明確にすることにより、責任の所在をはっきりさせているのが当社の考え方です。 自社設計、自社監理の場合どうしても甘く見過ごしになる事はやむを得ない事ですし、担当者自身のレベルの問題も出てきます。技術的裏付けの無いものは表面しか見えないし、センスの無いものは野暮ったく収めてしまいます(そのことも気がつかないことが多い)。 当社は、建築家である私自身が、打ち合わせをし、プランを描き、図面をチェックし、なおかつ現場を見、指導もします。 メーカーとの直接交渉もするし、施工者、職人とも打ち合わせをします。 ですから、少なくとも建築に関して収まり、構造、法令等に関して、「担当と相談してから返事をします」とか、「持ち帰って検討させてください」等と言ったようなことはありません。勿論自分でわかる範囲ですが、なんでもその場で返答は出来ると思っています。 現場監理に関しては、ひとつの現場に20〜30回は通います。 1回行くと3〜10個所程度の指摘事項をしてきます。 すなわち1現場で100個所ぐらい修正個所があるということです。 それは鉄筋の入れ方や、構造の不備、あるいはいい加減な収まりとか、仕事の段取りだったり様様です。 残念ながら、設計図だけで空間や雰囲気をすべて表現することは難しいというのが本音です。 職種の細分化がはかられ、次から次へと渡り鳥のように飛び回る最近の職人さんに「今造っている建物に愛着を持て!」と言うのは残念ながら少し難しいようです。 アトリエ系の私たちのような事務所にとって住宅は大事な作品です。 「ひとつひとつを後悔の無いように創り上げる」ことが目標で、そのお手伝いをすることが私たち仕事であり、そして最大の喜びなのです。 設計施工分離により施主側のメリットはもうひとつあります。 それは施工業者を選択できることです。 設計者である私は常に施主側の味方ですので、施工業者を指導監督する立場にあります。 故に現場には必ず緊張感が生まれます。 実施設計が終了まではいろいろな会社同士を競合させる事も可能です。(いわゆる、入札あるいは合見積り等と言われています) 設計はとことん詰めてそれから、建築会社を決める。 これは本来あるべき建築の形態です。 ただ、施工会社さんにはいろいろ協力してもらわなければなりません(・・・金額を含めて) その意味では信頼できる工務店を先に選ぶという方法も一概に悪いとは言えません。 ASJ(アーキテクツ スタジオ ジャパン)はこちらのパターンです。
私は建主をハウスメーカーや工務店の言うように「お客さま」とは考えていません。 もちろんお金をもらって仕事をするわけですから、立場上そうなるのはやむを得ないと思いますが、住宅を創ることは、物を買う行為とは違って無から有を生み出すと言うことです。建主、建築家、施工者が同列で一緒になりお互いに切磋琢磨しあっていくことがいいものを生み出す最大の要因と考えています。
そして、これが「建築家と作る家」の醍醐味 と思っていただければ幸いです。
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