予測しなかったクレームその2
・自然塗料フロアマスターは汚れに弱い?
マイスタープロジェクトで積極的に採用している自然塗料XION(シオン)のフロアマスターを床(SPFフロア-・18ミリ厚ソリッド)に塗ったあるクライアントより、汚れがつきやすく、いったんついた汚れや髪の毛が取れない等のクレームが発生しました。(普段スリッパを使用していることもあるようです)
メーカーに確認したところ、施工時期や、材質によっても異なるが、接着剤の成分である「にかわ」が十分に含侵しないと表面に残るので汚れを誘引することがあるとか-----。厚塗りや重ね塗り等がおもな原因みたいです。石油精製品をまったく使わない100パーセント自然塗料の難しいところかもしれません。
とは言え、問題無く使用しているところも多く、裸足で暮らしているのでさらさらして気持ちがいいと評判がいい人もいるのも事実です。この製品は残念ながら東北ではあまり使用されていなくて、関西、関東などシックハウスに敏感なところ引き合いが多いそうです。健康安全面を第一に考えるのがこのプロジェクトの鉄則ですので、今後もシオンのようなメーカーのものを使おうと考えていますが(さすがにシオンも今後は床用に油性の製品を開発しているとの事)ただクレームが出てしまっては元も子もないので、床用には代替品として新しい塗料を追加仕様としました。
ターナー色彩鰍ェ開発した自然塗料ESHA(エシャ)の「ワックスオイル」と言う製品です。これはワンコートで木材を保護するオイルフィニッシュの効果と撥水性や汚れ防止のワックス効果を兼ね備えていると言う優れものです。勿論自然塗料とうたっている事もあり、植物油や蜜蝋などが主成分になっています。
詳しくはターナー色彩株式会社ホームページをご覧下さい。なお、ワックスオイルはJIAの賛助会員でもある富士塗料興業鰍謔阡[入可能です。詳しくは富士塗料興業株式会社ホームページをご覧ください。
フロアマスターはダメと言うのではなくて、クライアントの家族構成や使用する材質によって適宜判断したいと思います。
コラム 第2回 予測しなかったクレーム(その1)
トップライトから音が…
原因は寝室の隣りの洗面所の天井につけたトップライト(スカイビュー電動タイプ: ベルックス)と寝室の上部の壁につけたハイサイドライト(同じ)からでる電動開閉用のモ-ターを制御する変圧トランスの発振による音でした。 |
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旧ルーフウィンドウの時はトランスは内臓されていないためこのようなトラブルは無かったと思いますが、取り付けを楽にすることと、リモコンを標準にするために内臓になったと記憶しています。(なおスカイビューはアメリカ製になっているとの事です。)
このようなクレームは過去に1件しかないらしくあまり問題になった事は無いと、ベルックスに担当者は言ってました。(個別差があり、どうやら殆どの人は気にならないようです。)
確かに勾配天井で(しかも板張り)反響する要因があった事と、周りの環境が非常に静かなところ、と騒音に関しては悪条件が重なった事もあると思います。 |
施主の承認のうえ、スカイビュー本体からの露出配線で個別にスイッチをつけることで解決しました(写真参照なお工事はベルックス)今後、寝室等に電動開閉タイプをつけるときは電源供給の単独スイッチを設けた方がよいと思います。 |
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コラム 第1回 マイスタープロジェクトのこだわり
今月より、不定期ですが数回にわたりマイスタープロジェクトの内容について、私なりに分析したいと思います(反省も込めて)。上記のデータを参考に読んでいただけると、より理解できるとおもいます。
今回はその1回目として「
マイスタープロジェクトのこだわり」を仮想対談型式でお送りします。
Q ここまで10棟創ってきて、ずばりマイスタープロジェクトのこだわりってなんですか?
A それはやっぱり、住まいの本質を踏まえたうえで常に新しいものに挑戦する姿勢を忘れないって事です。…極力創り手の意気込みとか肌合いみたいなものを感じられる作品が出来るよう心掛けてきたつもりですし、これからもそうありたいと考えています。
Q 住まいの本質って?
A ひとつは社会性、これは住宅に限らず建築一般に言えることだと思いますが、建物は出来上がってしまえば公共に曝される訳ですから、それなりの責任が生まれます。自分だけよければいいと言うわけにはいかない。
もうひとつは人が住む以上ある程度守らなければならない決まりがあるということです。たとえば雨が漏らないとか日照が確保されるとか、と言うことも含めて、朝起きて、食事をして、お風呂に入って、夜寝る、その行為の中に見え隠れする生活の様々なシーンを映し出す鏡としての役割を住宅が担っている訳ですから。
Q もっと具体的に言うと
A プランニングで言えば、単に必要な部屋数を充足するだけでなく、その部屋が持っている機能や、本来存在しなければならない位置とか向き、さらに連続動作の中に於いての役割なども考慮に入れなければならないのですが、そればかりで無くロケーションの観点からも考えて、その部屋に最も効果的な価値を与えるようなゾーニングも加味して考える必要があると言う事です。
たとえば、玄関の正面に便所の扉があるとか、同じく玄関から洗面所を通して浴室の入り口が見えるなんていうのは、やっぱりあんまり良い設計とは言えないし、普段は使わない部屋ばかり日当たりの良い場所にあり、家族はいつも電気をつけなければいられない暗い狭いところにしか集まらない、なんて言うのももったいない家作りの典型だと思います。それよりその敷地に対して最適な部屋の割り振りを決めて、それに自分達の生活を当てはめていくやりかたの方が長い目で見て良い結果が出るんじゃないかと思っています。
ただ、時代が進むにつれて住まい方というものは微妙に変化していているので、そのうちに住まいの本質って一体何ぞや!そんな考えはもう昔の話だ!なんて言う時代になるかもしれません。
Q 新しいものに挑戦するという姿勢についてもう少し詳しく
A 一戸一戸の住宅にテーマみたいなものを設定すると言うことでしょうか。でも、あまり厳密に決めてしまうと逆にがんじがらめになってしまいますから、その辺は適当に…何となく感じられる程度が良いのですが…。
具体的になりますが「青葉山プロジェクト」の場合は、ホームギャラリーというはっきりしたテーマがありましたから、全てがこれを中心に進められました。ここでは、採用した16角形が持つ豊かな空間をどうしたら住宅の中にうまく取り込むことが出来るか最大のポイントになっています。
「旧・馬坂の家」では、経営者でもあり技術者でもあるクライアントの若さや情熱といったものを無機質に輝くシルバーの箱を背に垂直性を強調した濃紺のスパンドレルと矩形のガラスを組み合わせたバーチカルパノラマウィンドウが岐立する形状を取る事により表現してみました。
「貝ヶ森の家」では黒のガルバと純白の吹付けのコントラストが不思議と周りの風景に溶け込んで、アクセントに使った濃茶の窓枠の木製モールディングが自然との共生を誘っているかのような雰囲気を醸し出しています。シンプルでシャープなシルエットは緑豊かな貝ヶ森の崖地を背に慄然と佇み、この古い団地に新しい時代をもたらす起爆剤になるような気さえ感じます。
また、これから着工する予定の「城南の家」では…クライアントのやさしさ…家族愛…をテーマとしたゾーニングが特徴です。3連窓のバーチカルパノラマウィンドウを持つ吹き抜けの居間と雁行しながらオープンにつながるフラット対面のDK、そして蓄暖をカウンターにはめ込んだ中央に位置する階段が2本の化粧柱を通して家族の絆を問い掛ける形になっています。
Q その他のこだわりについて
A 内外ともこだわっているのは「素材」です。
これはとても大事なファクターです。どんなにお金をかけた家でも素材の使い方を間違うと、とんでも無いものが出来上がってしまいますし、その使い方にポリシーが無ければただの絵空事になってしまいかねません。
出来るだけ本物を使うことにしています。一般的に本物と言うと即、高価と言う印象がありますが、このプロジェクトでは廉価であることが第一条件で、なおかつ贋物で無いものを探して積極的に採用しています。無論、国籍は問いません…この点に関しては残念ながら日本のメーカーは遅れています。(日本製と言ってもほとんどが中国製ですが)
合板のフローリングや塩ビのクロスは一切使っていません。造作材も内部建具も無垢やオリジナルのデザインで製作しています。
塗装に関しても最近は100パーセント自然素材に限定するようになりました。
断熱材もしかり、セルロースは古紙やダンボールのリサイクル商品でホウ酸が混入しているため防炎性や防蟻性に優れ、何よりそれ自体が水分を吸放湿するため「魔法瓶のような住宅」からの脱却と言う私の理念に沿った製品になっています。(この件はコラム・間違いだらけの気密化・参照)
外部はガルバリウム鋼板やレッドシダー(最近はサーモウッド)、ジョリパットと言った一見まとまりのつかない素材の組み合わせをシンプルな色合いの中で構成しています。
軒の出と外壁の取り合わせはとても大事で、残念ながら過去には、汚れに強いものとそうでないものとの取り合わせを理解してくれないケースもありました。これは前述したポリシーの欠如と同じと言っていいと思います。(建築を良く判っていない自称玄人やディベロッパーに多い)
塗り壁を主体とした「新富谷」、「青葉山」のような場合は深い軒の出は欠かせません、反対にガルバリウム鋼板のように汚れに強い外壁の場合はあえて軒は出しません…建物が持つシンプルさと、モダンさを強調するためです。
和風とか洋風とかと言った概念は既に古いと考えていいと思っています。だって生活様式は近代化の流れの中、洋風以外考えられ無くなって来ています。あとは気持ちの問題でしょうか…和の心はとても奥ゆかしく大切だと思います。逆に昨今はびこる似非洋風(えせようふう)には疑問を感じざるを得ません。
素材はとても大事と言う話をしましたが、最も扱いにくい素材は住む人間そのものです。
先程、似非洋風を批判しましたが、あのようなエクステリアとインテリアを持つ住宅で暮らせる人種がどれほど存在するのか理解に苦しみます。かと言ってすけすけのガラスだらけのプライバシーが無いような家にゆったりと暮らせるのかと言うのも疑問ですが…。
ひょっとしたら、ジャージやパジャマ姿のままでも肩をこらずに違和感無く住める家こそ器としての空間と中身の素材(人間)が一体化した究極の住まいなのかもしれません。
Q 構造は2×4工法が多いようですが?
A 全棟ともそうでした。別に在来工法が悪いと言う訳ではないのですが耐震性、デザイン性、断熱性、施工精度、等を総合的に判断すると私的には枠組壁工法(2×4工法)のほうが分があるような気がします。
それと設計事務所が積極的に関与できる工法と言うメリットも大きいです。(ただし世の中の大半の設計事務所は良く判っていないのが現状です。これは工務店も同様で、ええー!おいおいこんなにメチャクチャでいいのかい?っていう設計や現場はあきれるほどたくさんあります…皆さん注意しましょう)
最近、制震金物と言うものが開発された事によって在来工法にも新しい未来(たとえば伝統木造なんか特に)が見えてきたような気がしています。元々軸組み工法である以上ただ単に2×4工法のように壁や床をパネル化すれば耐震性が増すと言う考え方には私はどうしても組しないものですから…。
Q 話はつきませんので、今回はこれぐらいにして、また次回と言う事で終わりのしたいと思いますが。
A 長々とお付き合い有難う御座いました。